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0話 プロローグ


枕に・・・頭を預けて

窓の外を見ると・・・

風がごうごうとないている・・・。

ゆっくりと寝返り

へやの中をみると

とても沈んだ暗闇のなかに

一人の少年がみえた。

彼はときに笑い、ときに怒り、
いつも新しい遊びにむちゅうだった・・・。

遠く離れた故郷の・・、
遠く離れた日の自分が、
いつもそこにいるのだった。

 ・
 ・
 ・

風がごうごうとないている・・・ー

あたり一面に風が吹いていた。
雨も地面にたたきつけるように降っている。

「うわっぷ」

と、飛んでくる木の葉に顔をしかめつつ、
生ぬるい風を切るように、おれはあぜ道をひた走っていた。
傘は無く、ランドセルを頭の上に掲げて
雨をしのいでいる状態だ。

田んぼを脇に抜けて、
バス停を通り過ぎ、
赤いポストにさしかかると、
なだらかな丘がみえた。

ー・・・学校から家まではそう遠くはなかった・・・ー

緑の草が生いしげる丘の上に立っている家。
おれはそこに駆け込むと、
手馴れた様子でランドセルから鍵を取り出した。
この時間は父親も母親も働きに出かけているのだ。

濡れた手で玄関の扉を開けて、
靴を放り出す。
一直線にタタミの広間に行くと、
そのど真ん中にごろりと大の字になった。

「はあ~・・・」

と、深くため息をついて
天井を見る・・・。
そこは、昼間なのに天気のせいで少し薄暗い・・・。
振り返って開け放した戸の外を見ると、
風と雨が仕切り無く青い草をないで、
木の葉が空中を飛んでいく・・・。

外はあんなに騒がしいのに・・・
家の中はとても静かだった。
戸が開いているので風は少し入ってくるものの、
音はほとんど来ない。
風の音の代わりに聴こえるものといったら、
扇風機のカタカタとたよりなく回る音くらいだった。

濡れた灰色の髪を顔に貼りつけたまま、
大きな目を閉じる。

(親父もおふくろも夕方までは帰ってこないから、
 それまで寝るか・・・)

そう考えた数分後、
ぐっすりとねむりこんでしまった。
いつのまにか放り出したランドセルから
名前のにじんだ給食袋が飛び出しているのにも気づかずに・・・。

「給食当番1班:きりはら あゆむ」


<2010/07/18 18:03:56> NO.3
キーワード:外伝1 ことつたえた日

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