N o v e l ( HOME / 目次 / 一覧 / RSS 2.0 / ログイン )


2話 ひときれー1ー

「ごちそうさま~」
と、アユムは椅子を蹴ってフローリングに着地した。
時間は7時を回っている。
外の嵐はまだおさまらない・・・。
晴れの日なら外で羽虫を採ったりできるけど、
今日はそういうわけにも行かなかった。
「2階にいってくる」
と、アユムは自分の食器を流しに放り投げると、
すばやくキッチンを後にした。
二階には自分の部屋があるのだ・・・。

きしむ階段をのぼり、自分の部屋のドアをあける。
電気をつけていない部屋は暗くて、
外の風で窓がガタガタとゆれる音がした・・・。
「・・・・」
どこかがいつもと違う、
自分の部屋・・・。

アユムはすぐさま電気をつけた。
というか、つけずには居られなかった。
「ふぅ・・・。
 なにしようかな」
おもむろに、散らかった床をあさる・・・。
部屋にあったものは、
輪投げの輪だけ、ジグソーパズルのピース、絵本、虫取り網、虫かご、
欠けたクレヨン、画用紙、ブロック積み木、空き瓶、テレビゲームのソフト、
コマ、懐中電灯、釣り道具、図鑑、自作標本、めんこ、おはじき、
などなど・・・。
机にはビー玉2個とロボットのプラモデルが光っている。
遊ぶものはたくさんあった。
(でも、なんかな・・・)
と、アユムはブロック積み木を手でもてあそびながら思案した。
今日は家で静かに遊ぶ気分ではないのだ。
もっとわくわくするような、
外で遊んだときに感じる緊張感みたいなのがほしかった。
・・・ふと、
隣の部屋のことが頭をよぎる。
家の二階にはアユムの部屋のほかに父の書斎があった。
ちょうど、アユムの部屋の隣に・・・。
(親父の部屋にでも行ってみるか・・・)
父の部屋には何度か行ったことがある・・・。
今、勝手に入っても怒られはしないはずだ。

(ここより暗いかもしれないし、
 床が古いからきしんだりするかもしれないけど、
 何も恐れることなどない・・・)

アユムは自分の部屋を一瞥してから、
やや重い腰をあげて立ち上がった。

<2010/07/18 18:13:53> NO.5
キーワード:外伝1 ことつたえた日

Page 1 目次